「だれもが安心して暮らせる大分県条例」をつくる会会報 「あなたも わたしも」第1号 2011年7月29日発行 1面 ー願いを形にー 代表世話人 徳田靖之 「条例づくり」スタートにあたって  7月15日の朝刊に、またもいたましい報道がなされていました。発達障がいと診断された4才の娘さんを母親が殺害したというのです。これまでにどれ程の子ども達が、このような形で生命を奪われ、母親が殺人罪で裁かれてきたことでしょうか。私たちは、このような事件を繰り返させないためにこそ、障がいのある人もない人もともに安心して暮らすことのできる社会を作りたいと願ってこの条例作りの運動をスタートさせました。この条例作りがうまくいくかどうかの鍵は、当事者や家族の方々がどれだけ生の声をあげて下さるかにかかっています。そのためには、今まで自らの障がいの故にあらゆる差別や偏見にさらされ、耐えに耐えてこられたその思いを解き放っていただかなくてはなりません。障がいの故にあきらめさせられていた夢や希望をもう一度よみがえらせて、実はこんなことをしてみたい、こんな人生を歩みたいのだという願いを声にしていただくことが必要です。2011年7月29日第1号発行特に、今まで全くこのような声を表したことのない当事者やその家族に、私たちの呼びかけをお届けすることが重要で、これがうまくいかないようでは、条例作りの運動は掛け声倒れに終わることでしょう。今や障がいは、個々人の病気やケガ等による能力の喪失や減少というものではなく、社会の側の制度や配慮の欠除や無理解によるものだという考え方(社会モデル)が国際的に定着しつつあります。だからこそ、私たちは、私たち一人一人が、その個性に応じて、豊かで、安心して生きていく社会を作ることを現実のものにしていく可能性があると信じることができます。この信じる力こそが新しい時代を開いていくのです。力を合わせて条例作りを楽しく進めていきましょう。願いを形にするために。 手をつなごう!! さぁ、みんな一緒に (絵手紙2通掲載) 作者☆原野彰子さん☆一九六八年、中津市生まれ。別府市に住む私は、四十二年間の障害歴(脳性まひ)ですが、マイカーのスターレットとセカンドカーの電動車いすで何処へでも出かけます!絵手紙が大好きで、そして住み慣れたこの大分が大好きです!大分県に暮らす、すべての人にとって差別のない明るく安全なまちになるように、みんなのための条例が出来ればいいなぁ〜と思っています。 2面 条例づくりスタート!! 6月4日、結成総会を開きました  「だれもが安心して暮らせる大分県条例」をつくる会の結成総会が6月4日、大分市のアイネスで開かれました。県内各地から約200人が参加、千葉県の条例づくりの報告を聞き、障がいがある人や家族からの思いを熱っぽく出し合って、大分県条例づくりのスタートを切りました。 徳田靖之・代表世話人のあいさつ  「障がい」は社会の問題  障がいのある多くの当事者や家族はこれまで悔しい思い、悲しい思いをしてきた。千葉県条例は、当事者が条例づくりの中心を担った。その過程に学びながら、これまで社会や制度の壁に阻まれてできなかった願いが条例という形で実を結ぶように一緒に取り組もう。条例づくりに大切なことは、“社会モデル”と“合理的配慮”という考え方。“社会モデル”は「障がいは社会の側、制度、無理解から起きる問題」だということ。“合理的配慮”とは「安心して暮らせるために必要な配慮」でそれをしないことは差別だということ。この二つを武器にして、みんなで力を合わせて条例づくりに邁進していきましょう。 平野亙・世話人―取り組みの進め方  まず「事例聴き取り」から開始  会の構成は、30人から50人の世話人をつくり、世話人会のもとに作業チーム(6つの地域班・条例づくり班)を設置する。6つの地域班が7〜12月に各地域で第1期の“聴き取り”を実施し、さらに第2期の聴き取りを来年1〜3月に行う。条例づくり班は第1期の聴き取りを受けて条例案をまとめる作業に入り、第2期の結果も反映して、来年6月までに第1次条例案をまとめる。第1次条例案に対して広く意見を求めるとともに、賛同人を集めて、最終案をまとめ県議会に提出することになります。 リレートークの声  生まれつき脳性マヒという障がいを持ち、言葉も不自由でうまく話すことができない。片言しか話せないから低く見られたり、軽い扱いを受けてきた。そういう人の存在を皆さんに知ってもらいたい。宮西君代さん  盲導犬によって自分で歩くことができるようになった。いろんな人のお世話で今までやってこれたので恩返しをしたい。湯沢純一さん  高次脳機能障がいは、軽く見えるし、知らない人が多い。24時間手を抜けず、理解と支援が必要だ。小坂忠さん  ディズニーランドには「合理的配慮」があり、重度障がいの子どもも一緒に安心して楽しめた。地域でもできると思う。倉原英樹さん  精神障がい者が地域で暮らすためには、@訪問型サービスA緊急時など24時間、365日の対応B本人の希望に添って生きられる社会C家族への支援が必要。藤内浩さん  知的障がいの子どもはなかなか就労ができない。また“親亡き後”どうなるのか心配。松下清高さん  差別は遠くではなく身の回りにある。それを背負うことになるのは母親だ。母親の思いを受けとめた条例にしてほしい。安部綾子さん 3面 地域班からのコーナー 県北 内尾和弘  障がいがある人は、たいへんな“生きづらさ”を持って暮らしています。心の病を持った方から、地域で安心して身を置く居場所がなく、家で過ごすことが多く、たまに外出しても皆のように働いてもいず、声をかけられるとどう応えていいのかわからない。声をかけられない。地域にいても、地域にいない日々だというのです。5年前のアンケートで、障がいのある子どもさん(保護者)、事業所(施設)の通所者の多くが「余暇は家で家族と過ごしている」と答えています。家族責任という福祉の貧困が現状です。また、ある人は「『施設に入りたい』といって入所した人はいない」と言うのです。条例づくりは、より多くの方々が自分たちのことを自分で決められない不条理を知るとともに、考えあえる場になればと思います。 県南 倉原英樹  障がいがある人、ない人、高齢者が安心して暮らせる社会にするための県条例づくりを、それぞれの立場の方にご参加ご理解をいただき協力をお願いしたいと思います。差別の事例が多く出てくる事を期待していますが、一つの事例でも障がいがある当事者、それを支えている家族、障がいのない方の受け取り方によって、それが差別なのかと判断に迷うのではないかと思います。差別という事を意識することなく、今までに嫌な経験や思いをされた事例を些細な事でも良いので多く集め、取り組んでいきたいと考えています。条例が差別禁止だけでなく、障がい者、高齢者に対する理解と共に地域で暮らしている弱い立場の人が住みやすくなるような条例になることを願って頑張りたいと思います。 豊肥 小坂忠  高次脳機能障がいは他の障がいと異なった問題が多い。理解できる人がいないため、親が死んだ後どうなるのかと思う。また治療法も確立していない。精神病院に入れると荒れる。拘束されて本当におかしくなり、自殺した例もある。本人に適した居場所や仕事がない。職安で紹介を受けても、「障がい者は困る」と言われ、性別や年齢を口実に断られる。「働く場を」とNPO法人をつくったが、本人に遂行能力がなく、事業継続・維持が難しい。“建前と本音”も理解できない。社会に当事者の居場所がないのが現実だ。多くの医者が病気を理解していない。24時間付いていないと本当のことはわからない。行政の窓口に行くと、杓子定規の対応で切られることが多く、泣き寝入りする人が多い。行政が本当のことを知らない。しかし、助けてくれるすばらしい人もいる。行政でなければできないことが多い。もっと理解してもらいたい。 大分市 安部綾子  我が子に障がいがあると分かった時から今日までを振り返りながら条例づくりに関わっています。障がいのある自分の子とともに歩んできた中でいくつものトラブルや衝突はあったものの差別を感じたことはなく、逆に幸福感を感じながら今日まで来ました。しかし同時に、様々な障がいのある人の一部分しか知らなかったことに気付かされました。自分が幸福感を感じられる今があるのは、多くの先輩方が差別と向き合ってきたからだということもわかりました。いろんな人たちの歴史や思いが条例作りに反映されるように作業班の役割をしっかり果たしたいと強く思いました。県南では、福祉フォーラムを9年間開催。知り合えた仲間たちと一緒にさらに仲間を広げながら、障がいのある方々の声を集めていきたいと思います。よろしくお願いします。 ○‥地域班はここに掲載した四地域以外に「別杵速見国東」と「日田玖珠」があるのですが、次号でご紹介したいと思います。○‥「県条例をつくる会」はだれもが参加できる会です。年会費一口五〇〇円です。あなたもぜひ、ご参加ください。問い合わせは事務局(рO97・513・2313)まで。 4面 言わせちょくれ@「原発事故に思う」 大分市 元記者 小川彰 私自身、大分の地方紙に四〇年ほど在職。二年前に退職したばかりの身。もう二度と筆を持つことはあるまいと思っていたが、先輩諸氏から叱咤激励を受け再チャレンジ。このページはテーマ自由の“番外編”。本論に入る。五月三一日付朝刊を見て、思わずギョッと。九州電力による一ページの全面広告。「九州電力の原子力発電所の安全運転は私たちが責任を持って行います」の大見出し。「まさか、うちの社だけじゃあるまい」と思いつつ、県立図書館へ。案の定、九州各県の地方紙は全く同じスタイル。さらに九州版の全国紙も。見事なまでの勢ぞろい。これは中央の大手広告代理店による一斉配信とみられ、極めて高額。収入源で悩む新聞業界にとっては、ヨダレが垂れるばかり。読者には「記事と広告とは全く関係ありません」の姿勢で押し通す。これまで何十年にもわたって巨大独占企業と称される電力各社から巨額な広告費を受け取り、原発の“安全神話”づくりに大きな役割を担ってきたことは否定できない事実であろう。そして二回目の九電による全面広告。六月一八日付朝刊で、もちろん前回同様、各社の一斉掲載。ただ広告の内容が大きく変わった。政府や東電による情報隠しが相次いで発覚。原発への信頼が大きくぐらついていた最中だけに、原発の“安全神話”再構築に九電側も多少のためらいがあったのだろう。今回は「毎日の暮らしの中でできる“省電”へのご協力をお願いします」。注目すべきは一般的な“節電”じゃなく、“省電”という新語?。“節電”の節は「我慢して切り詰める」意味合いが濃い。対して“省電”の省は「無駄を省(はぶ)く」といったニュアンス。これは何を意味するのだろうか・・・。九電管内では現在、三基の原発が停止中。しかし火力発電の強化などで今夏は何とか乗り切れそうな情勢。だとすると、あまり節電が徹底されると、予測以上に消費電力が減り、要はもうけが減るという理屈。「“省電”レベルで十分」。電力会社の思惑が透けて見えよう。原発の“安全神話”づくりには、マスコミばかりでなく巨額な金が政治家や高級官僚、地元有力者などに流れたことであろう。さらに、原発関連交付金という“金の麻薬”が、過疎で悩む地方を金縛りにして原発立地を推進。今や「原発大国」に。この原発関連交付金という言葉を聞くと、沖縄の現状を想起させられる。全国の七五%もの米軍基地が集中する沖縄。沖縄には基地経済に頼らざるを得ないという厳しい現実が重くのしかかっている。基地関連交付金。大学への米軍機墜落事故や少女暴行事件が起きようが、いつの間にか県民の激しい怒り、基地撤去の声はかき消されてしまう。このことこそが県民所得全国最下位・沖縄の悲しい実態なのだ。この沖縄に原発のないことは、せめてもの救いであろう。原発だが、日本ほどのウラン濃縮や使用済み燃料再処理といった技術があれば核兵器開発は容易。そして種子島のロケットとセットさせれば核ミサイル搭載兵器へ。「持たず、作らず、持ち込ませず」。戦後日本の国是としてきた非核三原則が、すでに形がい化していることはご承知の通り。間もなく迎える八月九日には、広島と並んで被爆地となった長崎で平和祈念式典が開かれる。その平和宣言文をめぐり、ひともめしたという。それは「従来通り核兵器廃絶に絞るか、新たに脱原発を加えるか」にあったという。注目していきたい。今回の福島原発事故により、唯一の被爆国である日本国民は、あらためて原発の恐ろしさを実感するとともに、その恐ろしさは、あと何年、いや何十年続くことか・・・。子や孫の顔が思い浮かぶ。一方、自然エネルギーは絵空事ではないのか?日本経済は大丈夫なのか?との見方もあろう。政府や電力各社は国民の前に、これからのエネルギー政策や安全確保対策を明確に示し、かつ実行してほしい。「原発のない国」。このことは「だれもが安心して暮らせる地域づくり」の理念とも共通するのではあるまいか。そう確信する。 (写真説明)お尻でポヨヨーン負けてたまるか! 「だれもが安心して暮らせる大分県条例」をつくる会 連絡先 在宅障害者支援ネットワーク大分市都町2丁目7−4303号TEL・FAX 097−513−2313メールzaitaku@elf.coara.or.jp