「だれもが安心して暮らせる大分県条例」をつくる会 ニュースレター「わたしも あなたも」 臨時増刊号(全4面) 2013年2月5日発行 連絡先 住所 大分市都町2丁目7−4 303号 在宅障害者支援ネットワーク 電話・FAX 097−513−2313 メール info@daremoga-oita.net ホームページ http://www.daremoga-oita.net 第1面 見出し 「骨格案」から「条例素案」へー3月2日に臨時総会 本文 “私たちの条例案”へ!!  2011年6月にスタートした「だれもが安心して暮らせる大分県条例」をつくる取り組みは、3月2日の「県条例をつくる会」臨時総会で、「条例素案」=“私たちの条例案”を決定することになります。  歩みを振り返ってみると 2011年6月 県条例をつくる会の発足 2011年9月〜2012年6月 アンケート・聴き取り実施 2012年7月〜2013年2月 条例「骨格案」づくり となります。  最初の1年間は、障がいがある方や家族の願いや思いを聞くアンケートに始まり、声を出しにくい方のもとを訪ねて聴き取りを行いました。2年目は、伺った声を形にしていく「骨格案」づくりに取り組みました。寄せられた声と思いを条例の文案のなかに組み込む作業でした。  できあがった「条例骨格案」は、次のような特徴を持ったものになりました。 1,「思い」と「生の声」を込めた  [前文] 2,「障がいは個人や家族の責任ではない」という“社会モデル”に基づいた[総則] 3,「親亡き後」や「防災」、「性・結婚・出産・子育て」などを盛り込んだ[実体規定] 4,障がいがある人と家族が参加する 「障がいがある人の権利委員会」と「推進会議」、公募による「相談員制度」を設けた[問題解決・推進手段] (2ページ以降に説明掲載)  この「骨格案」をもとに、臨時総会で「条例素案」を決め、議会や行政、関係団体などに働きかけていくことになります。  これからの取り組みは、 2013年3月2日 臨時総会「条例素案」完成 2013年3月〜 意見募集・条例案作成  そして― 県議会提出 臨時総会が大切な一歩になります。 だれもが安心して暮らせる大分県条例をつくる会臨時総会にご参加下さい 2013年3月2日(日)13時30分 大分市 大分県総合社会福祉会館 4階 2面・3面 記事1 インタビュー  「全ての県民は、多様な性をもつ主体としてお互いに尊重しなければならない。特に、周囲の視線や言動等の様々な圧力によって障がいがある人は、しばしば性的な主体であることを諦めざるを得ない状況に置かれている。全ての県民はこの点を認識し、障害がある人が性的な主体として、自らの選択によって結婚や妊娠、出産、子育てを実現できる大分県を目指すものとする」(だれもが安心して暮らせる大分県条例・骨格案より)  千葉、熊本、北海道・・・。障がい者差別を禁止する趣旨の各地の条例になくて、大分にあるもの。今回の大分条例では「性・恋愛・結婚・妊娠・出産」を柱の一つに掲げました。担当した千住みなみさん(25)、廣野俊輔さん(30)にお話を聞きました。(聞き手:藤原留美) 廣野:担当するにあたり、障がいがある人の性についての本を読みましたが、まず千住さんの自由な発言を聞こうと思いました。 千住:障がいゆえの生きづらさというのは様々ありますが、性や恋愛、結婚について、これまであまり語られることが なかったように思います。心の奥底から湧いてくる思いを、うまく形にできないことが苦しかったので、条例づくりに携わる機会を得て、この部分をぜひ、形にしたいと思いました。ただ、子どもを生み育てること、女性として自信がないと感じる、この思いをどう文章にすればよいのだろう、と不安もありました。だから今回、廣野さんと組むことができ心強かったです。私がしゃべることを文章にしていく作業は大変だったと思いますが(笑)。 廣野:遠慮せずに思ったことを言い合えるようでないと、きっと上手く文章(形)にはできないと・・・。あまりに難しくて、途中、「これ本当に条例になるのかなー」と不安に思うこともたびたびありましたけど。 千住:「自らの選択」「自由」「積極的な性教育」など、言葉のもつ力というか、影響力について一つ一つを取り上げ、議論を深めていけたことはとても有意義でした。自分だけが悩んでいたのではないのだと実感することもできました。いろんな人に知ってもらい、考えてもらえたことで、少し、自信を持つことができました。 廣野:性・恋愛・結婚・妊娠・出産について大分県民が考えていく、これこそが社会モデルなのだと思います。自分には分からないからと、向き合うことをやめてはいけないのです。そう、強く思いました。 記事2 障がいの「社会モデル」にはこのような意味がある 〜 条例がめざす社会のあり方 〜 平野 亙 「わたしも あなたも」第5号に、倉田哲也さんと徳田靖之さんの対談が載っていました。倉田さんは『小さい頃から「まわりの人に迷惑をかけてはいけない」と言われて育った。「障がいは自分で克服しなければならない」という想いから抜け出せず、助けを求めることは恥だと思っていた。』と語っています。このように障がいを個人の問題とする考え方は、障がいの「個人モデル」または(障がいが医学的に診断できる事柄に起因し、医療等で軽減したり予防できるという考え方から)「医学モデル」と呼ばれています。 障がいが個人の問題、個人の責任とされるなら、その人が生きていくためには、自分(と家族)の努力で問題を克服することが求められます。障がいによる不利益や不自由は、周囲の人にとっては、恩恵的に手を貸してあげることはあっても、基本的に無関係なこととされてしまいます。このような、健常者を基準として、障がいを個人の責任に閉じ込める考え方を捨て、障がい特性を持つ人が直面する困難や不利益を取り除くのは社会の責任だとするのが、「社会モデル」の考え方です。 障がいは、個人の特性を暮らしにくさや生きにくさにしてしまう様々な社会のあり方によって形づくられる。このように考えるからこそ、その人の特性に応じて、必要な場面で必要な支援や調整を社会が行うことを「合理的配慮」とよび、「合理的配慮」を行わないことが差別になる、といえるのです。また、このような「社会モデル」の考え方は、「自立」の意味ともつながります。自立とは、人の手を借りないことではありません。必要な社会の支えを受け、自分の意思や選択によって自分らしく生き、生活することを自立というのです。私たちはみな、育まれ、教えられ、支えられないと生きていけません。自立の前提は支えあいです。「社会モデル」は、その支えあいの社会をめざす考え方なのです。 記事3 「親亡き後の問題」の解決こそ私たちの願い コ田 靖之  条例案には、総則として、この条例の目的や使われている言葉の定義(意味)などが書かれています。 中でも大切なものは、理念規定です。これは、この条例案がどのような考え方に基づいて作られているのかということを説明するものです。読んでいただくとおわかりのように、この理念規定の中で「親亡き後の問題」が取り上げられています。これは私たちの条例案の最大の特徴です。私が知る限り、このような規定が法律や条例に書かれることは初めてのことです。 今から十数年前に大分市内で発生した無理心中事件を例に持ち出すまでもなく、在宅での長い年月にわたる献身的な介護に力尽きた保護者が、ともにいのちを絶つという事件は後を絶ちません。 今回の条例作りのために行ったアンケート調査でも「自分が亡くなったら、この子の世話は誰がみてくれるのか」ということを考えると絶望的になり最悪の事態を考えてしまうことがあるという悲痛な叫びがいくつも寄せられました。 条例案では、障がいがある人やその家族が、自らが選んだ地域において、安心して暮らしていくことを可能にするためには、こうした「親亡き後の問題」に対して、県、市町村、関係機関が総力を挙げて取り組むことが大切であると定めています。 もちろん、この問題を解決するためには、行政や関係機関のみの努力だけでは不十分であり、地域ぐるみで支えていくというつながりと仕組みを作っていくことが必要です。 各則の中で、ディケアの充実やケアホーム等の設置と並んで地域福祉という規定を設けたのは、そうした考えに基づいています。 4面 「だれもが安心して暮らせる大分県条例」骨格案から ・前文 障がいの有無に関わらずだれもがかけがえのない人間として尊重され、地域社会において、ごく普通のあたりまえの生活が保障されなければならない。生まれた子どもに障がいがあっても祝福され、地域の子ども達と一緒に遊び、ともに教育を受け、学校卒業後も就労、あるいは活動の場、社会参加が保障される。 ・総則 目的 障がいがある人もない人も、だれもが、生を受けたことを喜び、だれからも一人の人間として尊重され、地域社会の一員として、ともに生きる社会を作っていく貴重な役割を担っていることが当然のこととして受け入れられる大分県づくり 定義(障がい・差別・虐待・自立・療育) 基本理念 すべての障がいがある人は、障がいを理由として差別を受けず、自らが選んだ地域において生活し、地域社会を構成するかけがいのない一員として、社会、経済、文化その他のあらゆる分野の活動に参加する権利を有する。「社会モデル」の普及や「親なき後」の対策も明記。 県の責務 県民の責務 財政上の措置 ・実体規定 相互理解県民は、日常生活のあらゆる場面において多様な存在を認め、だれもがかけがえのない個人として尊厳をもって生活をすることができるように、それぞれの立場の理解につとめなければならない。県は、障がいに関する社会モデルの普及に努めるとともに、県民の多様性に関する理解を促進するための取り組みを積極的に行わなければならない。 社会参加支援・生活環境 移動・住居・社会参加・コミュニケーション支援 等 医療・保健 関係者の障がいに対す理解をひろげるとともに受診しやすくする。 教育・保育・療育 子どもの特性に合った教育を受けられるように配慮する。入園、入学にあたっては本人または(及び)保護者の希望を尊重する。 性・恋愛・結婚・妊娠・出産・子育て 全ての県民は、多様な性をもつ主体としてお互いに尊重しなければならない。障がいがある人が性的な主体として、自らの性や生殖に関して自由をもっていることを尊重し、障がいがある人自身が望む場合に、恋愛、結婚、妊娠、出産、子育てを実現できる体制を整備しなければならない 日常生活支援 福祉サービス(日常生活支援)を受ける権利、所得保障など。 防災 県, 市町村及び地域住民は、災害時に支援を必要とする障がいがある人等 を支援するために、日常の準備と災害時における必要な対策を行う。  この他、差別の禁止・虐待の禁止、権利擁護、就労、地域福祉の項目があります。 ・問題解決・推進手段 障がいのある人の権利委員会 問題解決のために申し立てができる.障がいがある人が参加も参加して設置し、調査、説明・調整、関係機関への通告、助言・あっせんを行う。 地域相談員 公募による相談員制度を設け、身近な地域で相談にあたる。 障がい者権利保障推進会議(推進会議)広く県民が障がいがある人の特性 や困難を理解し、障がいがある人に対する差別と虐待を解消するために設 置する。障がい当事者(原則は本人)が半数以上参加する。 「骨格案」をお送りします。ご希望者は県条例をつくる会事務局へ 以上